2014年11月30日

『双六書』・その四

一 敵二六三六四六五六と打て六をさしてよのめを引たらハとるへし其外何六ならハよのめをさして六をかけへし重三四二まても引てかけへしか様二打されハ敵次筒ニ吉さい多ク打なりかぬれハ皆薄ともかけへし是のみならす敵目を引たり共我長クさしてあたらハかけへし敵何六とさし引たり共長クさしてあたらすハいつまても引かけへしましてたゝ一くみてあたらんおや


 敵が「26」「36」「46」「56」を出して「6の目をさし」て、余(よ)の目を「引いた」時のお話が書かれているっぽい。
 ここから推測できるのは、「さす」と「引く」は違うということ。
 バックギャモンのルールとノウハウを踏まえると、「6」を「26」などの6絡みの手の序盤は、バックマンを割って7ポイントに進め、もう一枚を13ポイントから降ろすことが多い。

 ……と考えると、『双六書』で使われている「引く」は、バックマンの進行方向から考えてマイナスの方に進む……つまり、12ポイントから1ポイントまでに折り返して来る駒を動かすときに使う言葉なのかなあ……と感じた。
 そう思って過去の「引」が登場する箇所を読んでみると、それなりに意味が通る。
 本当にあたっているかは不明だけれど、ひとまずこれで読んで見る。
 間違ってそうなら、後日修正。


 あと、前回悩んだ其外は普通の単語で、「そのほか」かも。
 「何六」は、「何かと6の目が出た場合」のことだと思う。


一 我そとの三地とくみたるハ重五を打ても五地へすゆる事あらしはを弐つ引へし


 ……5ゾロの話なんだと思う。
 8ポイントの2枚を三地(3ポイント)に置くよりも、13ポイントの2枚を「弐つ引く」=2枚降ろすってことなのかな?(言葉の意味はわからないけれど、バックギャモンのセオリーを踏まえて強引に意味を当てはめるとそうなのかも、という話なので間違っている可能性も極めて高い)


一 我か四を引たる時又四一を打てハ一をハさして四を引合すへし作れぬハ打時をくわられすきおひに打もなし何様ニもわろきなり


 4の目がからむ時の話だと思う。
 4を出したあとに、更に「41」を出せば、1を「ハさし」て、4を「引合」すと良いのだそうだ。

 と、なると。
 1を6ポイントから一枚降ろし、4の方でその上に乗っけてブロックを作ると良いよ! ってことだと思われる。つまり、「ハさす」は「端さす」で「端石にする」だと思われる。その上で、「引合」は「引き合わす」か、あるいは「マイナスの進行方向に進めて石を乗っける」ことだと思う。


 「引く」は現在のバックギャモンでも使える時がありそう。例えば、「この3どうする?」「おれなら引くなあ」(バックマンなどをすすめるのではなく、マイナス方向に進めるよう駒を動かすの意味)で、一発で会話が成り立つ場合があるだろうし。


一 我引たる石の次の筒ニ合されハとて其石を助とて我か前へさしたる敵のはをかけて石を返す事あらし石一つをたすけんかためにおくれて惣而まけ有ニなす事浅間敷事也助かたき石石をすつるニハしかし打置ぬれハ引合る事も作事も有へし我石の一つかへりぬれハ三筒のおくれなるへし


 「浅間敷事也」は「あさましきことです」だと思う。

 「我石の一つかへりぬれハ三筒のおくれなるへし」は、「自分の石が一つヒットされると、合計三回分降るくらいの遅れになるよ」ってことかな? この項目が「引く石」の話だから、たしかにそんなものだと思う。


一 地をハ大おくれにニ取なから入はを取ぬれハつのりて必負也片おくれより外ハは入はを取へからす




一 おくれ打へき事必おくれはしめへからす雖然敵高目を打我小目を打なり手石なとをとられたハ五地の石皆おり我三地の石をさしわりて片一とかくへし多クの羽おくれとて一地三地五地を取れ敵の石みな入たらハ五地の石を軈さしわりて片一とかくへし又一地二地をは取へしニ地の小おくれとハ是を云也高の羽ニなりぬれハ勝事必はつれすなり



 「雖」は「こうだとしても」の意味らしい。
 「雖然」なら「にもかかわらず」の意味らしい。
 「高目」が大きい目で、「小目」が小さな目。
 「軈」は「やがて」の意味らしい。
 「惣而」は「総じて」の意味らしい。


一 片おくれの事敵の前四地をとりて外の六地又は五地を取て後ハかけ内目をつかふへし恐へからす


 片おくれとか、「おくれ」にまつわる言葉もちゃんと意味を捉えないとダメかも。
 大おくれなども含めて、専門用語っぽいし。


 
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2014年11月28日

『双六書』・その3

一 我かとうを取て可仕めの事重四四一一六をハ貳つさすへし重二重三をハさし引へし三二四二をハ高目をさして小目を引也此手ハ敵ひかれさる手也引は我ひとりてきおひと成ひかれさるハ敵のすくむ手也一二三一五二五一五三二六五六をハさして引へし重五重六をハ二つ引へし重一をハすへし但敵の筒たる時ハか様二打間敷事敵先筒にして一六を打て二さしたらハ我次に五六を打ハ長クさすへし四六打ハ貳つさすへし六させて幾度も引て被懸終二引合て負二成也敵重六と打六とさゝれハ一に合すへし其外六をハ引つめよ一をハ打立よ手石二つとられたらハおくれを可心懸也


 多分オープニングに近いロールのあれこれ。
 「敵先筒にして一六を打て二さしたらハ我次に五六を打ハ長クさすへし」は、相手が六一を振った後、こちらが五六を振ったら大変だよね……的なことを言ってそう。(「長クさすへし」の正確な意味は不明)

 なお、ここからおそらくだけど、ゾロ目2倍のボーナスはなかったんじゃないかと推測できる。
 というのも、ゾロ目2倍のボーナスがあるなら、一六だけでなく、重六や重三でも、ゴールデンポイント封鎖による六五の悲劇の話をしただろうから。


一 重一すへさる先ニ石の上ならハとて重二すゆること尤吉也


 本当は1ゾロが一番いいのだろうけれど、すでに5ポイントにブロックを作られていたら、2ゾロのほうが良い……という話?


一 我前のそとにくみたる石を重三重四なとゝ内々五地へすゆる事不可有我か石我そと手にくみあわれハ多クて五地の番ニ勝と云へり



一 敵二と引たる時ハ我か片四をさして向へし片二を引合すハ取てきおひになるへし合たらハ我もさしくみて後まても吉也敵の一六重一をすりて打か様にうたされハ筒数に敵のさい多クおつるなり敵三をさし向かへしか様の手ハ始よりおわりまで多ク有へし重一を打てすゆる時我重六打たらハさすへし引ぬかるれハ敵重而かくへし敵二を打て二地をとり我も六と打て四と引合へし敵二と不打共五一四二まても五地に引其外合めあらハ二地二合へし敵一ヲ前に打立たらハ我か遠きはを取へし其外一をハ打立へし六をハ引つめよ一六ならハ引て打立へし敵五地をとらハ六に引合すへし六をとらハ一に合すへし五六五二ハ二つとられたり共我も五をうてはを取へしか様の手は始よりおわりまて多ク有なり


 出目による戦術が描かれてそう……というのはわかった。
 「其外」とか、「引合」とかがよく出てくるんだけど、どういう意味だろうね、これ。


 
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2014年11月27日

『双六書』・その2

 毎日少しずつ書いていったら、数日で全部丸写しできる……と思ってやってみる。

一 行つれの事一二四三三六を打てくむとて初の石を小目の始もとを寄て仕人は人とかむる事有へしはハ先三をこそつかハれ候へと云也惣而此手のみならす何めにても小目の石を取て行高めの石をそろへて仕候へハ行つれにもならすみはも吉也


 ……うむ。わからん。
 「行高めの石をそろへて」あたりは、高くなったスタックを解消して……あたりなのかなあ。


一 石をつかふ事さし引めならハ先さすへし引て入目ならハ先引へしさかりおり先つくへし貳つ引ハ後の石遠へ仕えし入も如此なり


 貳つは「二つ」。


一 手石を取事我か石をつかわさる先ニ取てとりて後我か石を遺事不可有其をハ敵の地石ニて五をハ六と移る也



一 おくれ双六の事我一は取て負ては難義の事也勝負ならハ作不籠して散にわりて散てきへも石を返して敵の前にハ悉くミて餘石を取りあひしらへ返し可打但敵の前にて石二つとらるる様に打へからす


 「おくれ双六」は、ランで負けてる状態か、バックゲームのことだと思う、が確証はなし。後ろに書いてある文がわかれば、逆算して意味がつかめる?

 餘石はおそらく「あまりいし」で、多分「端石」のことでブロット=ぽつん余った一つだけの石(駒)とのことだと思う。



 
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2014年11月25日

超貴重な安土桃山時代の盤双六資料、『双六書』(1583)

 と、タイトルに書きましたが、草場純さんにいただいた資料は「翻刻 双六書」。タイトル通り、「双六書」(1583年)を翻刻したものです。(翻刻者は島居清さん)


 さて、その「双六書」!
 これが実に素晴らしい資料なのです。

 今まで盤双六の資料といえば江戸時代のものがほとんど。それがこの資料は安土桃山時代なのですよ! お陰で見たことがない内容が盛り沢山!


 はじめの方の翻刻を抜き出してみると……。


一 人の打さいをかく事一番のうちに二度かくへからす大切の時一度成へしさいを凡かくもひたりの手にて右の手くひをとらふるように仕御さいみ申候はんとてかくへし

一 我か打さいを人のかく事貴人ならは我か左の手へうつし可渡同程の人ならは左の指を筒へそゆるやうに敵の手に移へしさいを返事筒尻我左へ引やうに番の上へこほすへし

一 双六打時物いわす番の上石かゝらす筒いわ手つきせすわうくせす高あかりせす久あんせす筒久ふらす又てうよはすしかり打せす吉さいふきはらふ石つよくかけす惣而か様の事共人に見おとさるへからす


 などなど……。
 意味がほとんどわからないのはさておき、なんともまあ、今まで読んできた盤双六資料とはまた違った内容がたくさん書かれていそうなのが素晴らしいです!


 番は盤でしょうし、さいはサイコロのことでしょう。筒は筒で、石は駒のこと。
 と考えると、例えば引用した最後の文は、「共人に見落とさるへからず」という内容から、打つときの注意かも、と思えたりします。(古文さっぱりな管理人のことはあまり信用しないように)
 「高あかりせす」は「高(い所の)灯りはダメ」ってこと……?(手が影を作って、イカサマをさせる隙を与えるのはよくないとか?)
 「久あんせす」は、打つときに長考すぎる(久しく案ずる)のはよろしくないとか?


 などなど、いろいろ推理できて楽しいです。
 こういうのが3ページ分ずらりとあり、しかも双六の盤面図も掲載されています。


 正直、現時点で研究はまったく進んでおりません。(いや、資料を送っていただいた草場純さんはすでにいろいろと研究されているのですが)
 ……が、ここに全部引用するのは大変ですので、興味ある方はCiNii論文にありますので、そちらからご利用ください。(手続きは必要かと思いますが、だれでも入手できると思います)


 CiNii論文:翻刻 双六書


 
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2014年11月24日

温知業書 第11編(1914年)

 こちらも草場純さんから頂いた盤双六資料。
 1914年に刊行された温知業書の11巻に「雙陸」の項目があり、盤双六の文献などが紹介されている。


 そこで気になったのが、室町時代中期に書かれた「壒嚢鈔」(あいのうしょう:室町時代中期に編纂された辞典)を引用した箇所。

壒嚢鈔巻三に、双六の名目

 相見 品能 扣子 平賽 乞虫 入破
 採居 立入 袖隠 透筒 要簡 定筒


 と引用されている。


 よくわからない言葉の羅列だけど、第一感だと、これマナーやイカサマへの注意の話なのかなあ……と。

 たとえば「袖隠」となると、袖に隠したイカサマサイコロを使うものが連想できる。
 イカサマ関連だと思って「平賽」を見ると、どこかが潰れてある目が出やすくなった平らなサイコロが連想できるし、採居はサイコロをそのまま置き続ける現代の「置きサイ」のようにも思える。

 でもマナーだと思って読むと、「袖隠」は手が隠れるような袖はいけません、という注意のように思えるし、「採居」はサイコロはちゃんと動かすまでそのままにしましょう、と書かれているように思える。「平賽」はちゃんと平らなサイコロを使いましょうね、と。

 なんにせよ、「壒嚢鈔」(あいのうしょう)を見ないとダメだということだけど、こういうよくわからないものを適当に推理して楽しむ時間は楽しいということで……。


 
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2014年11月23日

梶浦浩二郎『雙六の遊び方』(1968)

 10月下旬、草場純さんからたくさんの資料を頂いていました。
 梶浦浩二郎『雙六の遊び方』(1968)もその一つで、本双六のルールが書かれています。


 【現在のバックギャモンとの違い】
 1.2個サイコロを振り、大きい目を出したほうからスタートする。(初手にゾロ目がありうる)
 2.サイコロを振り、出た目の数だけ石をすすめる。(ゾロ目2倍ボーナスはない)
 3.陣地に入れば終了。(ベアリングオフはない)
 4.「無地勝」を「最も名誉ある大勝」としている。(ただし、ギャモン勝ち、バックギャモン勝ちのように、ルールや点数に踏み込んではいない)


 【今まで紹介してきた書にはない用語など】
 ・剥げる〔はげる〕:プライムを超えられず、インナーボードの6ポイント5ポイントを空き地にしてしまうこと。(本文中の用例→『内六地や内五地などが「剥」げて空地となり、それから相手の石を切っても、空地に用意に置いて直ぐ帰進してしまう。)


 
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